1980年からプログラマしています

どうしてプログラマすることになったか書いています。過去日記です。

プラス・ワン 二コグラフ、SIGGRAPH入賞(198X年)

 澤井さんや制作部のD君は、実写合成のために、何度もプリレコーディングを繰り返していた。当時のEARTHTECTURE-SUB-Iレンダリング時間は、わずか5秒だった。

 このプリレコーディング映像には、高松伸氏の立ち位置に特別なオブジェクトが仕込んであった。そのオブジェクトは十字架だった。建物の中にずらーっと十字架が並べてあった。ちょっと不気味() プリレコで、撮影のタイミングを綿密に練っていたのである。

 ブルーバック撮影時には、澤井さんは高松伸氏に、今どこの階で何をどう見ているかや、目線やしぐさ、秒数等の指示を細かく出していた。

 この時、ブルーバックに落ちた高松伸氏の影も、綺麗にクロマキー合成された。

 そして、この地下三階、地上トップライトだけという奇抜なデザインのEARTHTECURE SUB-Iの中を、完成前にデザインした建築家自らが歩き、自らの建築を鑑賞する、この画期的なCGアニメーションは、ニコグラフで賞を頂いた。

 翌年のSIGGRAPHにも応募したところ、スクリーニング・シアターに入選し、SIGGRAPHビデオレビューにも載った。

 結局、EARTHTECURE SUB-Iは、最初に澤井さんが作ったもの、2回目は私が絵コンテを切って澤井さんがアニメーションをつけたもの、3回目は澤井さんが絵コンテを再度切って、高松伸氏を合成したものの3本が作られた。3本目の作品が二コグラフやSIGGRAPHに入賞した。

 制作予算は同じなのに、3本ものCGアニメーションを作って大丈夫なのか? しかも誰もやったことがない方法で、実写とCGの合成までやってのけた。

 クライアントからリクエストなんかされてない。むしろクライアントは「これは高松伸のプロモーションビデオか?」と呆れていた。改めて澤井さんの目指している目標と技術力の高さに驚いたのだった。