1980年からプログラマしています

どうしてプログラマすることになったか書いています。過去日記です。

2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

プラス・ワン お墓参り(20XX年)

澤井さんは、普通の人の2、3倍位もの濃い内容で人生を送ったと思えるが、それにしても早かった。澤井さんのお母さんは、今でも優秀な息子を亡くした悲しみから解放されていない。 毎年8月13日にお墓参りに行くが、本人のお墓でなく、澤井家先祖代々の墓にお…

プラス・ワン 澤井健永眠(199X年)

辞めてしまったので、その後プラス・ワンがどうなったのかは、詳しくは分からない。プラス・ワンは、東京にあるバスという建築設計事務所と提携して、バス・プラス・ワンとなった。澤井さんは、離婚してVECの女性スタッフと再婚。VECの東京事務所を作って、…

プラス・ワン 寿退社(199X年)

プラス・ワンに入社当初の、スタッフ全員が力を合わせて1つの仕事を完成させるというワクワク感が消えて、日々目の前の仕事をこなしている感じが強くなっていった。 澤井さんはVECに行ったきりで(と行っても同じビル内の事務所なので、どっちかの事務所に寝…

プラス・ワン 創立10周年(199X年)

プラス・ワンに来て10年近く過ぎていた。澤井さんの超人的とも言える、知力・体力・気力と、澤井さんを尊敬するスタッフの全員の力で、プラス・ワンは大きく成長していた。最初6人、10畳ほどの事務所からスタートして、社員数は15名を越え、江坂駅前のビ…

プラス・ワン CG全盛期へ(199X年)

VPXユーザ会は、年に一回催して、各社が制作したCGアニメーションを上映したり、澤井さんの講演をお願いしていた。澤井さんは、どんなに忙しくても、何も準備していなくても、檀上に上がって「えー…」という第一声を発すると、その一瞬で今日話す内容を頭の…

プラス・ワン ゼネコンCG狂乱(199X年)

バブル全盛時代、ゼネコン各社も建設技術には大きく差がないので、3DCGアニメーションで技術力を競うようになって来た。ゼネコンが、まるでSFの様な、超高層、海底都市、月面や火星の宇宙基地をCGアニメーションで作って見せた。 当初、ゼネコンは自社開発…

プラス・ワン 阪神淡路大震災(199X年)

阪神淡路大震災が起こった日にも、制作部のYさんは泊まり込みで仕事をしていた。朝方の猛烈な揺れで、書庫や本棚は倒れ、ワークステーションの19インチもの巨大なディスプレイが横に吹っ飛び、停電して、全ての機能が停止した。Yさんは机の下に隠れて無事だ…

プラス・ワン 澤井さん首の骨を折る(199X年)

澤井さんは、アメリカのA/E/Cシステムズという展示会を見学するために、フロリダに外遊していた。ついでにフロリダのディズニー・ワールドにもでかけたらしい。帰路、同行していた建築設計事務所の人に車の運転を変わった後、フリーウェイの路肩のくぼみにタ…

プラス・ワン HPのグラフィックエンジンの終焉(199X年)

プラス・ワンは、HPシリーズ700のTurboVRXを追加購入して、3台のグラフィック・エンジンを使うようになっていた。このパワーのお蔭で、少々仕事が増えても大丈夫だった。相変わらず長尺のアニメーションを量産していた。 しかし、HPの新製品の発表会で、ハイ…

プラス・ワン プレステ初の音ゲー(199X年)

これ以上お金をかけると、バーチャル・イーストが倒産する。話し合いの結果、澤井さんとM氏は、袂を分かつことになった。M氏は、企画をソニーに持って行き、制作は継続することになった。プラス・ワンの制作部のD君が出向して、アニメーション制作を手伝うこ…

プラス・ワン VEC社長交代(199X年)

バーチャル・イーストが発足してから、最初の東(あずま)社長は大したこともしなかった。取締役会で東社長が増資の話を切り出したところ、代表は交代になって、澤井さんが代表取締役社長になった。建築CGアニメーションの制作の方は制作部の部長N氏やD君に任…

プラス・ワン マルチメディアへ(199X年)

マルチメディアがブームになった。CD-Iという規格や、静止画やアニメーション、音楽を組み合わせたCD-ROM作品が作られ始めた。それはMacの普及ということも連動していた。 マルチメディアの影響で、レーザーディスクにレーザー・アクティブという機能が追加…

プラス・ワン 仲直り(199X年)

A/E/Cシステムズの座談会の爆弾質問以降、笹田教授は大きく方針を転換した。プラス・ワンとCGアニメーションで張り合うのでなく、全く別のODE(Open Design Enviroment)というコンセプトを打ち出し、CGアニメーションはその中のほんの一部であるというスタン…

プラス・ワン 爆弾質問(199X年)

ある年のA/E/Cシステムだった。座談会形式の講演会で、建築業界の大物の先生に混じって、笹田教授も壇上にいた。質問の時間になって、ある中小のゼネコン会社の人が手を上げて質問した。 「笹田先生とこは、たくさん儲けてるんでしょ。どれくらい儲かってま…

プラス・ワン 笹田教授の圧力(199X年)

笹田教授にしたら、教え子が自分を飛び越えて有名になって行くのは、面白くなかったらしい。毎年行われているA/E/Cシステムズという建築業界の総合展示会では、笹田教授や澤井さんの講演もあったので、表立っては何もないが、両者の火花が飛び散っているのは…

プラス・ワン 横河・ヒューレット・パッカード(199X年)

横河・ヒューレット・パッカード(YHP、1999年に合弁解消)は、笹田研究室とプラス・ワンが少々きな臭い関係ではあったことを理解していた。 YHPのワークステーションのパンフレットには、建築のCGが多用されていた。表紙には笹田研究室で制作したCG、内側、裏…

プラス・ワン VPX(199X年)

大阪大の笹田研究室の卒業生は、大手ゼネコンに入社して、CG担当者になっていた。そして在学中と同じ様に阪大のソフトを使って、ゼネコンで建築のCGアニメーションを作っていた。それは初期のプラス・ワン同様の徹夜の連続であった。 笹田研の卒業生は、…

プラス・ワン 笹田教授との確執(199X年)

プラス・ワンの制作したCGアニメーションは、二コグラフで賞を頂いたり、SIGGRAPHのスクリーニングルームに入選したりと飛ぶ鳥を落とす勢いであった(当時)。 仕事場では、毎日誰かが徹夜したり(澤井さんは、徹夜しているというより会社に住んでいた)、土日…

プラス・ワン 拡大アンチエリアシング(199X年)

あおりアンチエリアシング、いや拡大アンチエリアシングというべきか。通常サブピクセルレベルで行うアンチエリアシングを、グラフィック・エンジンで巨大画面をレンダリングして作り出す逆転の発想だった。拡大アンチエリアシングでは、横4倍、縦4倍の大き…

プラス・ワン CGであおり(199X年)

あおりカメラと同様に、CGでも視軸をずらす、つまり透視変換行列を平行移動してやれば良いのではと考えた。実際に透視変換行列をStarbaseのライブラリを使って取り出して、平行移動してみたら、あっさりとあおり写真ができてしまった。 いやちょっと、まてよ…

プラス・ワン あおり写真(199X年)

ある日、澤井さんに、あおりが出来ないかと聞かれた。建築物などの巨大なもの全景を写真に収めようとすると、半分位が地面になってしまう。 あおり写真は、地面をトリミングして建築物だけの写真にする手法である。それを一歩進めて、蛇腹型のあおりカメラと…

プラス・ワン 通商産業大臣特別賞の受賞(199X年)

完成前の新梅田シティのエレベータのドアが開いて、群衆が出てきて、廊下を移動して、オフイスに入っていく。広いオフィスの手前を歩いている群衆はビデオ合成なんだが、奥で歩いている人はポリゴン・テクスチャマッピングで動いている。これで広い空間を動…

プラス・ワン 実写合成パート2(199X年)

ノリにのった澤井さんは、新梅田シティでも実写合成するという。以前のビデオ合成は、一人だけだったが、今回はオフィスというので、エレベータから大勢の人が出てきて、広いオフィスの中を歩くという。 再び在版のS編集スタジオの協力で、以前と同様の2カメ…

プラス・ワン 映り込み(199X年)

新梅田シティの完成イメージのCGアニメーションを作ることになった。建物は全面ハーフミラーで出来ているという。澤井さんが、このガラスの反射をレイトレーシングでレンダリングしてみたものの、あまりにも時間がかかり過ぎて1枚計算するのがやっとだった。…

プラス・ワン ラジオシティとレイトレーシング(199X年)

TurboVRXのグラフィック・ライブラリのStarbaseがバージョンアップして、ラジオシティとレイトレーシングが使える様になった。何と先進的なグラフィックライブラリだったんだろう。 ラジオティは熱力学を応用した大域照明の計算手法である。ラジオシティでは…

プラス・ワン シャドウイング(199X年)

影は、オブジェクトを高さ方向にスケール0で潰して斜めにして重ね描きでレンダリングしていた。ウソ影でも無いよりましであるが、やっぱり正確なシャドウイングは必要だと思っていた。しかし、技術部をたった一人でやっているので、手が回らなくなって来た。…

プラス・ワン PA-RISC(199X年)

プラス・ワンは、阪急山田から江坂に引っ越した。人数や機材が増えて事務所が手狭になったので、広いオフィスを探していた。でも、ベンチャーに貸してくれるところは中々見つからなかった。何度も不動産屋を訪ね、やっと江坂に新しくて広いオフィスを借りる…

プラス・ワン TurboVRX(199X年)

HP社の新型グラフィック・エンジン、TurboVRXが発表された。Zバッファの精度は24ビットになり、テクスチャマッピングも可能になった。 グラフィックエンジンの描画能力もさらに高速になった。67万1千アンチエイリアスベクトル/秒、21万6千三角形/秒、9万8…

プラス・ワン 建築耳学問(198X年)

プラス・ワンに来るまで、建築のことは全く知らなかった。澤井さんたち建築の人の話を聞いていたら、建築科はデザインと構造に分かれているらしい、 デザインは構造をやっている人が「まいりました」という位、奇抜なデザインを考えて、逆に、構造をやってい…

プラス・ワン カメラコントロール(198X年)

SCOPEには、澤井さんのカメラのアニメーションのこだわりが反映されていた。それは視点と注視点の位置関係である。 SCOPEは、画面に平面図と立面図にカメラの視点、注視点の線分が常に表示されている。実は、この視点と注視点の距離が重要なのである。 CGア…