プラス・ワン 澤井健(198X年)
最初は、大阪大の院生が書いたというプログラムのバグを直していた。しかし、いつまでもバグ直しばかりしていられないので、全く新しく書くことにした。
JCGLでは、オリジナル・ソフトウェアが何もなかったころから初めて、やっと全部揃ったと思ったところで解散してしまった。
「また最初からか…。」
でも、何もないところから始めるのは得意だった(笑) 毎晩遅くまでC言語でプログラムを書いた。
制作の人達は、もっと遅くまで仕事していた。特に澤井さんは毎晩徹夜していた。
澤井さんは、昼間はプロデューサ業、もしくはディレクタとしてのクライアントとの打ち合わせ、夜は、CG制作の仕事をしていた。そのあまりにも凄まじい仕事ぶりに、スタッフの誰もが澤井さんを尊敬していた。それに、ただ人並み以上に働いているだけではない。
とんでもなく頭が良く(特に数学)、アイディアが豊富で、暗記も凄かった。花の名前や星座などは、聞けばすらすら出てくるし、クライアントの電話番号も100人分は軽く記憶していた。
しかも運も底力も強かった。いつもぎりぎりにレコーディングが終わって、編集、MAした作品は、一発OKだった。時間ギリギリでも仕事を落としたことはなかった。
そして澤井さんの作った映像を見た人は、誰もがその自由な視点のアニメーションに感動するのである。
CGで作られた未来の建築や都市の中を、自由奔放に飛び回る。それは無理なく、計算されつくしたのではなく、狙ったわけでもなく、あくまでナチュラルな不思議な浮遊感を感じるのだった。
プラス・ワンに来て、知力、体力、運気、この3つの能力をすべて兼ね揃えていて、惜しげもなくその才能を提供する澤井さんに改めて感心したのだった。